先日、岐阜県土岐市のZEROJAPANにお伺いし、製造工程を見せていただきました。ZEROJAPANのご快諾をいただきましたので、以下、その詳しい工程を掲載させていただきます。
現在、ZEROJAPANの製品を使っていらっしゃる方は、お使いのものにますます愛着を持っていただけるに違いありません。これからと検討されている方にも必ずや参考にしていただけると思います。
2013年6月吉日
本日はZEROJAPANの製品がどのような工程で作られているのか見せていただけることに。ワクワク楽しみです。ランチをいただきながら、ZEROJAPAN宮嶋さんに本日の予定を説明していただきました。
この地域での焼き物は、細かい分業で行われているそうです。
今回は製造過程の順にと、下記4か所を見学させていただきます。
1.製型所 → 2.鋳込み作業所 → 3.窯元 → 4.ZERO JAPAN
ZEROJAPANは全てオリジナルデザインでZEROJAPANの井上社長が企画しています。企画されたデザインを製型所で実際の形にしていきます。
1-1 製型所
まずは、黒田製型所。
ここでは、焼き物の型をつくります。
1-2 製型所/型づくり
ZEROJAPANオリジナルのデザインをもとに石膏で出来上がりの形をつくります。
焼き物は焼くと締まるので、作成する型は大き目になります。ZEROJAPANのポットは13%大きくするそうです。ろくろを使って、手作業でつくっていきます。
1-3 製型所/製型道具
壁にびっしり並んだ製型の為の道具。これらの道具もすべて手作りだそうです。
ティーポットの取っ手など、ろくろをまわせない部分は特に熟練の技が必要です。
1-4 製型所/ティーポット型
いよいよティーポットの形が決まったら、その形をつくる「型」をつくります。
出来上がりのティーポットを包むような感じです。ユニバーサルティーポットの場合は上と底の部分と右側半分と左側半分の計4つの型が必要になります。
1-4 製型所/ティーポットの型の型
いろいろなポットの型の型です。ひとつひとつが大きい!
「ポットの型」があれば用は済むのでは?と最初は思いました。
型の型が必要な理由は、ポットの型は、何回か使うと使えなくなるものだからなのです。次の鋳込みの工程で納得することになります。
1-5 製型所/大根おろし
余談ですが、こんなものの型もつくっておられます。このとんがり具合、角度や並びを決定するまで、何度も何度も大根をおろして確認されたそうです。大根がちっともおろせない安物も世の中にはかなり出回っているらしいです。
2-1 鋳込み作業場
ユニバーサルティーポット3人用(450CC)の鋳込みをされていました。
ここでは、以下の作業を行います。
1.ひとつひとつの型に土をいれる。
2.生地の厚みを調整する。
3.型から取り出す。
4.バリを取り除く。
5.表面を滑らかに整える。
6.自然乾燥させる。
型から取り出すまで、写真のような大きい型を人の手ですべてひとつひとつ移動させます。
土を入れる6つの注入口、この開閉までも手作業です。
型を回転させながら静かに泥を入れていきます。
急いでいれると小さな空気の泡が入ってしまうそうです。
2-2 鋳込み作業/生地の厚み調整
土を型いっぱいまで入れ、一定時間たったところで型をひっくり返して余分な土を流します。
型は水分をよく吸収するようにできています。
さらに一定時間経過後、型からティーポットをはずします。
2-3 鋳込み作業/型から外す前
型は何度も繰り返し使っているうちに少しづつ膨張してきます。
蓋もセットのポットであれば全体の大きさが若干変わるぐらいなので、若干の膨張であれば多少は使い続けることが可能なのですが、ご存じのとおり、ティーポットの蓋はステンレス製。
膨張してしまった型でつくったティーポットは、蓋とすぐ合わなくなってしまいます。その為に、定期的に新たな型を作成することが必要になります。
2-4 鋳込み作業/バリがある状態
型から外した直後の状態です。しっとりした手触りでかなり水分が感じられます。
注ぎ口や蓋をとりつける部分には、まだ「バリ」とよばれる土がはみ出したものがついています。
2-5 鋳込み作業/バリ取り後
バリをとった状態。なめらかで綺麗です。
これを風通しのよい棚で乾かします。
白くてとても軽いです。
ちなみにこのような鋳込み作業場は、地域にたくさんありますが、製型所と密接に繋がっていることが多く、特に看板を出していません。
作業場がどうかは、「焼き物を運ぶコンテナが外に積んであるかどうかで判断できる」と宮嶋さんが教えてくれました。
3-1 窯元/素焼き
いよいよ最終工程が近づいてきました。
ここでまず素焼きをして、色付け、最後に本焼成となります。
これは素焼きの窯の中です。強度を増す為に700度で約7~8時間焼きます。
ポットがぎっしり並んでいる様子は芸術的でさえあります。
これも人の手でひとつひとつ並べていきます。
3-2 窯元/釉薬タンク
手前に並んでいるのは釉薬のタンクです。
ZEROJAPANのアイテムは何十色もの色がありますので、その管理も大変なものだそうです。ちなみに釉薬の色の名前と、ZEROJAPANの商品色の名前はほとんどリンクしていません。作業場には、色の名前の対比表がはってありました。
3-3 窯元/施釉
施釉では、素地と同じ収縮率の釉薬を使用します。
ポットの内側からつかむ挟みのようなものを使ってポットを釉薬の中に静かに沈め、ゆっくり回転しながら上に引き揚げていきます。一定の速度のよどみのない動きです。釉薬が重たいゼリーのような感じのする、不思議な動きでした。相当の神経を集中させて動かしていらっしゃるように感じます。
最後はポットの口を下にして釉薬を切ります。
手首をいっぱいまでひねり、垂直にして慎重に持ち上げます。
ちなみにこの釉薬は「アンティークブラウン」だそうです。まったく違う色なのですね。職人の方はこの色を「あめ」と呼んでいました。すべてのポットの施釉がこのようなひとつひとつの手作業で行われていることは、かなり衝撃でした。
3-4 窯元/糸底のふき取り
糸底についた釉薬を黄色いマットでふき取ります。黄色いマットは一定の速度で回転しています。
写真を撮るのを忘れてしまいましたが、ポットの移動は20センチ幅、1.5メートル長さの板にポットを20個くらい並べ、皆さんがその板をほぼ片手でバランスを取りながらひょいひょいと運んでいる様子には、度肝をぬかれました。
3-5 窯元/窯入れ準備
窯入れの準備です。この窯は酸素を入れる酸化焼成です。同じ窯の中でも、内側と外側では温度が異なります。
内側は、一度焼いたけれど小さな補修が必要なものや、低い温度の方が適している色のものなどを入れます。たとえば、アンティークシリーズのノーブルブラックなどはマットな質感を残すために、内側で焼くそうです。この他に、酸素を入れずに焼く還元焼成の窯があり、色や材質によって使い分けられます。
3-6 窯元/窯内部
左の写真は、窯内部の天井部分です。思ったより広く感じます。
右の写真は、窯内部の下の部分です。両脇にこのようなガスの炎が出る穴があります。
3-7 窯元/窯入れ
いよいよ窯入れです。
約1250度で約18時間焼いていきます。
冷却時間を含めると24時間です。
3-7 窯元/焼き上がり
焼き上がりです。これから冷ましていきます。
右側の写真の上2段のポットは「トマト色」ですが、まだ温度が高いために殆ど黒っぽく見えます。冷えるにつれて鮮やかな赤に変わっていきます。
3-7 窯元/検品
焼きあがった後の検品ではじかれたもの。修正可能なものは修正します。
釉薬を塗り直して再度焼成します。
4-1 ZEROJAPAN/最終検品と箱詰め
ZEROJAPAN社での最終検品です。
ティーポットであれば、ここでステンレスの蓋を装着し、箱詰めされていきます。
終わりに
今回、製造過程を細かく見せていただき、ひとつひとつの作業に人の手間ひまがかかっていることに大変驚きました。また皆さんお忙しい中、私たちの急な訪問にも嫌な顔ひとつせず、作業内容を丁寧に説明してくださったり、いろいろなものを触らせてくださったり、質問に答えてくださったり、本当に温かく歓迎してくださいました。
岐阜から送られてくる完成品の検品をしていつも感じていたこと、、、、ZEROJAPANのポットが同じサイズや色でもどこかほんの少しずつ違う雰囲気を持っている理由は、こんな風に温かい職人さん達の沢山の手を通して、丁寧に作られているからなのだ、と気が付きました。
それぞれの作業所では、ベテランの職人さん達がもくもくと作業をしていらっしゃいましたが、後継者が不在であるという所も少なからずあるようです。(後継者の問題は、岐阜の陶器づくり全体に言えることだ、と宮嶋さんが仰っていました。)
「ものづくり」と言う言葉が最近お洒落なイメージで見直されてきているように思いますが、私がイメージしていたのは、ものをつくる前の段階の企画やデザインの方に比重があり、地道な製造作業そのものには、頭が全くまわっていませんでした。
でも、本日見せていただいたような地道な作業があって初めて、よいものを沢山の方にお届けできるんだな、、と考えさせられました。
岐阜県土岐市の職人さん達が心を込めて作ってくださっているZEROJAPANの数々のアイテム。一度手にとってもらえれば、必ず何かが伝わってくる素敵な品々です。